歳月
umieのこのサインを取り付けて約6年、この錆び方に歳月の流れを感じると共によく続いたものだと我ながら思います。 最初の年はエアコンもなく、冬はストーブだらけの店内、お客さんは店に入ってコートを着たり、天窓からは雪が舞ってきたりした。 夏は夏で暑い店内、扇風機で過ごした。2年目にエアコンが入ったのだが停電になってしまいうちわを配ったりした。今では笑い話のようだが、当時のumieは毎日がこんな感じでした。それでも暑くてもお客様は帰らず店にいてくれた。灯油臭くてもいやな顔をせずいてくれた。3年前には大型台風に見舞われ、umieの北側、海に面した窓ガラスが飛ぶのではないかと思う程の強風を体験、停電、停泊していた宇高国道フェリーが難破し、umieに迫ってきたのには驚いた、まるで映画のワンシーンを見てるようでした。高潮で海水が溢れだしすっぽり海に浸かってしまったumie、まさしくumieでした。 メニューはドリンク5品とケーキの3種類だけだった。来るお客さんも一日10人、15人の日が続いていた。毎日きてくれる人もいて、僕は嬉しかった。初めて自分たちで働いてお金を得たという実感が嬉しかった。コーヒー一杯だして500円を頂く、その繰り返しのなかで、自立とはこういうことなんだと知ったと思う。 デザインで何十万、何百万円の仕事もたくさんしてきたが、500円を稼ぐことの大変さとその喜びの大きさにデザインとは別の価値を体感しました。 今このことを知っているスタッフは店長の他誰もいない。umieって何だろう、と自分でも分からなくなる時がある、僕たちのデザインの表現の場、確かにそうなんだけれど、商売の場にはしたらいけないと思っていた。3年、4年、5年と歳月を重る度、その思いは強い。 |